![]() |
![]() |
器物の形態 ○箱の蓋の形式 ・合口造り あいくちづくり 蓋と身が口縁部で合う構造になっているもの。 ・印籠蓋造り いんろうぶたづくり 蓋と身が口縁部で合う構造のもののうち、身の内側の立ち上がりが特に高くなっているもの。印籠の 合口の構造がこうなっていることからこの名がある。これとは逆に、蓋の内側の立ち上がりが伸びて いるものを「逆印籠蓋造り」という。 ・被蓋造り かぶせぶたづくり 蓋が身にすっかりおおいかぶさるような構造になっているもの。 ○茶器の形式 濃茶を入れる器を「茶入ちゃいれ」というのに対し、薄茶を入れる器を「茶器」と総称する。 ・棗 なつめ 棗の実に似た形の茶器。蓋と胴は、だいたい一対二の割合で分かれる。 ・雪吹 ふぶき 蓋と底の縁を同じように面取っており、蓋と身の見分けがつきにくい形をしている。これを、吹雪の 中を歩くと上方も足元もわからなくなることになぞらえて名付ける。通常「ふぶき」は「吹雪」と書 くが、茶人は「雪吹」とする。 ・中次 なかつぎ 円筒形の茶器で、胴の中間で蓋と身が合口で分かれるようになっているもの。 塗り ○呂色塗り ろいろぬり 油分を含まない漆を塗り、炭で研いで磨きあげる塗りの技法。これに対し、油分を含む漆を塗り放っ て研がずに仕上げる技法を「花塗」という。 ○拭漆 ふきうるし 脱脂綿や摺刷毛などを使って薄く摺りつけ、その後和紙などで拭き取って仕上げる技法。木地固めや 素地(きじ)につやをつける時、あるいは呂色仕上げの時などに用いる。 加飾技法 ○蒔絵 まきえ 漆工芸の代表的な加飾技法。漆で文様を描き、漆が乾かないうちに金・銀の粉、色粉などを蒔きつけ て文様を表す。技法により、研ぎ出し蒔絵、平蒔絵、高蒔絵などに分けられる。 ・研ぎ出し蒔絵 粉を蒔いたのち、粉が隠れるまで器の全面に上塗り漆を塗重ねて粉固めをし、乾いたのち、全面を平 らに研いで再び文様を表す技法。正倉院に伝わる金銀鈿荘唐大刀の鞘に施された「末金鏤(まつきん る)」もこの技法の一種。 ・平蒔絵 粉を蒔いたのち、文様部分だけに透漆を塗って粉固めをする技法。透漆を塗らず、粉を蒔いただけで しあげるもの(蒔き放し)もある。研ぎ出し蒔絵よりものちに現れ、桃山時代の高台寺(こうだいじ )蒔絵に代表される。 ・高蒔絵 文様部分を高く盛り上げ、その上に粉を蒔いて文様を浮き上がらせる技法。漆だけで盛り上げる「漆 上げ」、炭の粉を蒔いて盛り上げる「炭粉上げ(すみこ)」錆(さび)漆で盛り上げる「錆上げ」な どの手法がある。鎌倉時代からみられる。 ○漆絵 うるしえ 器面に朱、黄、緑などの色漆で文様を描く技法。漆器の加飾技法の中で、最も古くからおこなわれて いるもののひとつ。 ○彫漆 ちょうしつ 漆を何層にも塗り重ねて厚くし、文様を彫り表わす技法。塗り重ねる漆の色により、朱漆を用いた堆 朱(ついしゅ)、黒漆を用いた堆黒(ついこく)などの種類がある。木地に文様を彫り、漆を塗り重 ねることで同様の効果をあげようとしたものに鎌倉彫り(かまくらぼり)や村上堆朱(むらかみつい しゅ)がある。 ○存星 ぞんせい 色漆で文様を描き、輪郭や細部に線彫りを加えて文様を際立たせる技法。中国の明(みん)時代に盛 んに行われた。「存清」とも書く。 ○蒟漿 きんま 漆塗りの面に刀で文様を彫り、そこに色漆を充槇して、文様を表す技法。タイ、ミャンマー地方で発 達し、日本には室町時代に伝えられた。現在、彫漆、存星とともに高松で盛んに行われている。 漆芸用具 ○漆 ・生漆 きうるし 漆の木から採取した漆液からゴミなどの異物を濾過したもの。水分が多く、粘りけが少ない。拭漆や 漆器の下塗り、あるいは、接着用の漆として用いる。塗料としての漆には、生漆から余分な水分を取 り除き、攪拌して質を均一にしたもの(透漆すきうるし)や、さらに鉄粉、辰砂(しんしゃ)朱や各 種顔料等を加えて黒、朱その他様々な色を付けたものを用いる。 ・錆漆 さびうるし 砥石の粉を粘土状に水練りし、生漆を混ぜたもの。単に「錆」よもいう。漆塗りの下地や錆仕上げ高 蒔絵などに用いられる。 ○筆・刷毛 はけ ・面相筆 めんそうふで 穂先が細くて腰の強い絵筆。日本画では顔の細部などを描くときに使う。イタチの毛が多く用いられ る。 ・蒔絵筆 まきえふで 蒔絵に用いる筆。普通の絵画用の筆に比べて毛が柔らかく腰が強い。また筆の穂先の取りはずしが自 由で、毛を束ねたまま穂の長さを自在に調整できるようになっている。 ・地塗筆 じぬりふで 線描き以外の広い面を平らに塗るのに用いる筆。猫や狸の毛などを用いる。 ・漆刷毛 うるしばけ 漆の上塗りに用いる刷毛。婦人の頭髪を檜(ひのき)板にはさんで作る。毛先が擦り減ってきたら、 鉛筆を削るのと同様に檜板を削って中の毛先を出して使う。 ○炭 ・朴炭 ほおずみ ホオノキを焼いた炭。堅くて粗質。下塗りや中塗りの研ぎに用いられる。 ・駿河炭 するがずみ 赤身のエノキあるいは油桐を硬質に焼いた炭。中程度の硬さで質は粗い。静岡炭ともいう。下塗りや 中塗りの研ぎ、あるいは呂色塗りの下研ぎなどに用いられる。 ・呂色炭 ろいろずみ エゴノキ(チシャノキ)を消炭のように焼いたもの。柔らかくて質にむらがない。呂色塗りの上研ぎ などに用いられる。 | |
戻る | |