一国斎塗と外国人

日本の文物が大いに発展してきたとは云うものの、共進会の審査官ですら、この漆器を以て彫刻と認める位であるから、之を欧米のそれに比べて見ると、まだ今日を以て甘んずる事情には行かないのである。

一国斎塗りも本邦人よりは外国人に反って、賞玩せらるるのである。それも或る一方から云えば無理はない。

捲煙草入箱一個を仕上げるにも、一ヶ年以上を要するのであるから、従って代価も決して廉(やす)いとは云えない鳥渡(ちょっと)したもののように見えても参拾円位が一番下値であるから、広島地方では需用者が少ないが、其処に至ると外国人は四拾円や五拾円の金銭を何とも思わないから屡々(しばしば)注文して来るのである。

其代り意匠などに関しても随分希望を言って来るそうであるが、それは当所に居る外国人の手を経て横浜、神戸、長崎辺から、注文するのであって、主なる製作品は捲煙草入、菓子器などが多いのである。



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