「 自分だけの宝物箱 」

幼少の頃、何の変哲もないがらくたを宝物にしていた。
道で拾ったミニカー、透き通った石ころ、海で見つけた巻貝・・・・。
捨てに捨てられない自分だけの宝物を小さな箱に入れていた。
毎日のように開けては中を見ていた。
出しては入れ、入れては出していた。

一年、二年と宝物がだんだんと大きくなっていく。
初めて買ってもらった自転車、ラジコンカー、飛行機のプラモデル、一週間ごとに模様替えをしていた。
部屋が宝物箱になった。

うれしさのあまり宝物箱の中ではなかなか寝つかれない。
でも、いい夢を見ていたような気がする。
大人になり、ふと自分の宝物は何だろうかと思ってしまう。見つからない・・・。


今、私は漆という素材を使って宝物箱をつくる。
ひとつの作品に半年から一年、またはそれ以上の時間を費やす。
作品をつくっている間というのは、頭の中でいろいろなことを想像している。
何を入れようか、どこへ置こうかと・・・。
その間に手は形をつくり上げていく。

無意識のうちの気持ちというものは、昨日や今日に生まれるものではない。
私の手を動かすこの気持ちもそうである。

人は誰もが自分だけの、自分だけが知っている大切な宝物の思い出を持っている。

池田 昭人
このエッセイは、1992年の中国新聞社発行の中国ぽしぇっとに掲載されました。

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